初代様が神様に自殺をうったえてから、二、三日たった、1935年(昭和10年)1月18日の夕方のことです。
初代様は、門前仲町にある、得意先の亀田屋へ行こうと出かけました。途中、福島橋の上まで行きますと、北風がピューッと強く吹いてきますので、あまりの寒さに上着を取りに自宅に戻りました。
そうしますと、自宅では、同業者の佐藤安孝が、血相を変えて、店先に腰をかけて座っているのです。初代様の家族は、みな驚いて身動きが出来ない状態でした。そこで初代様は、
「やあ! 佐藤さん」
と言いますと、いきなり佐藤は初代様に、
「そこへ座れいっ!」
と、どなりつけます。初代様が、
「佐藤さん。どこで飲んで来たんだい」
と、いいかげんにあしらっていると、
「我は佐藤ではない。汝の守護神なるぞ。汝は3月限りの満州大豆をなぜ空売りした。このままにしておけば、汝はこの佐賀町の土地にはいられなくなるぞ。我が相場を告げる故、買い越すべし」
とどなりつけ、目をつるし上げます。その気色があまりきびしくて、初代様も恐ろしくなり、心細くなったので、
「亀田屋さんを呼んではいけませんか?」
と尋ねますと、佐藤は、
「許してつかわす」
とのことでしたので、初代様は、さっそく同業者で「亀田屋」と呼ばれている蕪木(かぶらぎ)広二を電話で呼びました。
初代様は、門前仲町にある、得意先の亀田屋へ行こうと出かけました。途中、福島橋の上まで行きますと、北風がピューッと強く吹いてきますので、あまりの寒さに上着を取りに自宅に戻りました。
そうしますと、自宅では、同業者の佐藤安孝が、血相を変えて、店先に腰をかけて座っているのです。初代様の家族は、みな驚いて身動きが出来ない状態でした。そこで初代様は、
「やあ! 佐藤さん」
と言いますと、いきなり佐藤は初代様に、
「そこへ座れいっ!」
と、どなりつけます。初代様が、
「佐藤さん。どこで飲んで来たんだい」
と、いいかげんにあしらっていると、
「我は佐藤ではない。汝の守護神なるぞ。汝は3月限りの満州大豆をなぜ空売りした。このままにしておけば、汝はこの佐賀町の土地にはいられなくなるぞ。我が相場を告げる故、買い越すべし」
とどなりつけ、目をつるし上げます。その気色があまりきびしくて、初代様も恐ろしくなり、心細くなったので、
「亀田屋さんを呼んではいけませんか?」
と尋ねますと、佐藤は、
「許してつかわす」
とのことでしたので、初代様は、さっそく同業者で「亀田屋」と呼ばれている蕪木(かぶらぎ)広二を電話で呼びました。