ある日、初代様はお店に来た飯島という老人のお客に使いをたのまれ、「おつりが五銭くるが、それはお前にやるよ」と言われました。
喜んだ初代様は使い先にすっとんで行き、用をすませた帰り道、いつも道ばたの屋台で焼いている、一つ一銭の大福を五つ、ペロリと食ベてしまいました。それから良い気持ちになって帰ってくると、斎藤主人から、
「お前、おつりはどうした?」
と聞かれて、びっくりです。
「へい!」と言って表へ飛び出し、日ごろ可愛がってくれているたばこ屋のお婆さんのところへ飛びこんで、
「人のおつりを途中で落としたから、お婆さん!早く貸しておくれ」
と五銭を借りて、飯島さんに返そうとしました。
すると斎藤主人は、
「ちょっとここへ座れ!いったいこのおつりをどこから借りて来た。お前は大福を買って食べてしまってないはずじゃないか!」
ときびしく詰め寄られました。初代様は、顔を赤らめて、どぎまぎしてしまい、
「旦那!飯島さんは、おつりはお前にやる、と言ったんですよ」
と言いますと、斎藤主人は、
「それは俺もそばで聞いていたから知ってるよ。けれどもなあ、やると言っても、まだお前のものじゃないんだ。いったん飯島さんに引替証といっしょにおつりを渡して、そのあと、飯島さんが改めてお前に手渡してから、はじめてお前のものになるんだ」
と言いました。ちょうどお店にいた年寄りの客たちからも、
「晴どん!旦那がなあ、このようにきびしいことを言うのは、決して憎くて言うんじゃないよ。お前が可愛いからなんだよ。お客の傘などが倒れていたら、それ晴どん!などと言われぬ先に立てなおしておくようでなければ、出世はしないよ。また、人さまのお金などはたとえどんな訳があっても、一銭でも我がものにするんじゃないよ」
と1時間以上も長々と説教され、初代様は足がしびれてしまいました。
初代様は、飯島さんが「おつりはお前にやる」と言ったから大福を買って食べたのにと思い、しゃくにさわってしかたがありませんでした。いっそ逃げ出して郷里へ帰ってしまおうと思いましたが、いつしか忘れて月日がたってしまいました。
喜んだ初代様は使い先にすっとんで行き、用をすませた帰り道、いつも道ばたの屋台で焼いている、一つ一銭の大福を五つ、ペロリと食ベてしまいました。それから良い気持ちになって帰ってくると、斎藤主人から、
「お前、おつりはどうした?」
と聞かれて、びっくりです。
「へい!」と言って表へ飛び出し、日ごろ可愛がってくれているたばこ屋のお婆さんのところへ飛びこんで、
「人のおつりを途中で落としたから、お婆さん!早く貸しておくれ」
と五銭を借りて、飯島さんに返そうとしました。
すると斎藤主人は、
「ちょっとここへ座れ!いったいこのおつりをどこから借りて来た。お前は大福を買って食べてしまってないはずじゃないか!」
ときびしく詰め寄られました。初代様は、顔を赤らめて、どぎまぎしてしまい、
「旦那!飯島さんは、おつりはお前にやる、と言ったんですよ」
と言いますと、斎藤主人は、
「それは俺もそばで聞いていたから知ってるよ。けれどもなあ、やると言っても、まだお前のものじゃないんだ。いったん飯島さんに引替証といっしょにおつりを渡して、そのあと、飯島さんが改めてお前に手渡してから、はじめてお前のものになるんだ」
と言いました。ちょうどお店にいた年寄りの客たちからも、
「晴どん!旦那がなあ、このようにきびしいことを言うのは、決して憎くて言うんじゃないよ。お前が可愛いからなんだよ。お客の傘などが倒れていたら、それ晴どん!などと言われぬ先に立てなおしておくようでなければ、出世はしないよ。また、人さまのお金などはたとえどんな訳があっても、一銭でも我がものにするんじゃないよ」
と1時間以上も長々と説教され、初代様は足がしびれてしまいました。
初代様は、飯島さんが「おつりはお前にやる」と言ったから大福を買って食べたのにと思い、しゃくにさわってしかたがありませんでした。いっそ逃げ出して郷里へ帰ってしまおうと思いましたが、いつしか忘れて月日がたってしまいました。